鍵を握るのは深い呼吸
新型コロナ感染に伴う後遺症を考察
新型コロナの騒動勃発から早くも数年が経過しました。
当院にも新型コロナウィルスに罹患歴の有る方がだいぶ増えて参りましたので、こちらのコラムは当初記述した内容に一部追記や修正を加えた最新版となります。今後も新しい情報が有りましたら都度加筆修正する予定です。
それでは本題へどうぞ。
昨今では変位を繰り返す新型コロナに感染した人も数多くなり、治癒直後もしくは治癒後しばらく経ってから後遺症とみられる体調不良に陥る人が多数報告され、新たな社会問題となっています。
厚生労働省の発表によると新型コロナウィルス感染症の後遺症に関して代表的な例として疲労感・倦怠感、関節痛、筋肉痛、咳、喀痰、息切れ、胸痛、脱毛、記憶障害、集中力低下、頭痛、抑うつ、嗅覚障害、味覚障害、動悸、下痢、腹痛、睡眠障害、筋力低下などを上げています。
また当方で調べた上記以外の代表的な後遺症として、物忘れ、筋力低下、不眠、食欲不振、咽頭痛、呼吸苦、眼や口腔乾燥、結膜充血、四肢の浮腫や冷感、不安感、頚部痛、胸部や背部痛、腹部(の筋肉)痛、発疹などの報告も確認出来ました。
当院に於きましてはオミクロン株の流行以降は罹患歴の有る方が増えて参りました。そう言った方々に治癒後の状態をお伺いすると、咳が続いている事、息苦しさ、倦怠感、咳を繰り返した事による首や背部、みぞおち周辺の痛みや違和感、眠りの質の低下などが気になる方が多い様です。
咳が酷い状況が続くと姿勢や呼吸に関わる筋肉が過度に拘縮します。その事により慢性的に呼吸も浅くなり血液に乗って流れる酸素や栄養素の量が減少したり、体内の二酸化炭素や老廃物の回収にも影響が出たり、血液循環の悪化に比例してリンパ液の巡りも悪くなってしまい身体の恒常性を保つ事が難しくなる事で中枢神経や末梢神経(体性神経・自律神経)の問題を始めとする多くの健康問題(後遺症)に繋がる可能性が有ります。
首の筋肉の重要性
「寝違い」でお馴染みの「胸鎖乳突筋」と言う首の筋肉も咳が続く事で柔軟性が失われる筋肉の一つですが、胸鎖乳突筋は文字通り胸骨、鎖骨、乳様突起(側頭骨)を結ぶ筋肉で僅かに後頭骨にも掛かっているとされています。
胸鎖乳突筋の柔軟性が失われると乳様突起を介して側頭骨が下方に引っ張られ僅かながら骨の位置にもズレが生じます。すると側頭骨に開いた脳神経の通り道(穴が2つ有ります)にもズレの影響が出る恐れが有ります。
具体的には耳たぶの裏辺りに開く「内耳孔」と言う穴を顔面(舌)神経、内耳(聴)神経が通り抜け、側頭骨と後頭骨で構成している「頸静脈孔」と言う穴を舌咽神経、迷走神経(副交感神経の別称です)副神経が通り抜けています。
ここで登場した神経の名前と新型コロナ感染症の症状(後遺症も含む)にも深い関係が有ります。
「内耳孔を通る神経」
顔面神経・・顔が左右非対称になる顔面神経麻痺で知られた神経だと思います。顔面神経は他にも涙や唾液の分泌にも関与し、味覚の2/3(舌の手前)を司る舌神経も顔面神経から分岐している神経です。新型コロナの味覚障害は舌神経と後述する舌咽神経が正常に働いていない状況になります。
内耳神経・・聴神経とも呼ばれます。文字通り耳に向かう神経で聴覚や平衡感覚に関与しています。目まいや耳鳴りなどの症状に関与します。
「頸静脈孔を通る神経」
舌咽神経・・味覚の1/3(舌の奥の方)を司る神経です。唾液の分泌や口内の触感、温感、喉の筋肉を動かす働きも有ります。
迷走神経・・自律神経の一片を成す副交感神経と解釈して頂いて結構です。迷走神経が正常に働いていない状態が「自律神経失調症」です。口内では嚥下に関与しています。
副神経・・胸鎖乳突筋や僧帽筋を動かしている運動神経です。影響を受けると首や肩に凝りや痛み、動作の制限が出る場合が有ります。
※補足:舌咽神経、迷走神経、副神経、共に12種有る脳神経の一部となっております。
※補足:味覚は顔面神経がメインで舌咽神経と併せて感じていますが、食べた物の熱さや食感、痛みなどを感じているのは舌咽神経や三叉神経の働きです。かき氷を勢い良く食べると頭がキーンとしますが、あれは氷の冷たさに三叉神経の一部を構成する上顎神経が刺激された状況です。
今回は首の筋肉と関連する骨を一例に取り上げてみましたが、新型コロナウィルス感染に伴う咳を繰り返しの咳によって関連する筋肉や、それらが付着する骨は大なり小なり影響を受ける形になります。
当院で行っている施術
新型コロナ治癒後の後遺症が残る方々に当院で行う施術は従来からの施術同様に身体(姿勢)や自律神経のバランスを整え、呼吸に関わる筋肉を調整し、皆様が持っている免疫力や自然治癒力を活性化させる事を目的とした施術を行います。
呼吸器系や循環器系の症状が有る方は一般的に左側弯の影響を受けている事が多く、(利き足や利き腕が「右」の方は高確率で左側弯になります)また罹患中に繰り返した咳によって首、胸部、背部、腰部、横隔膜や肋間筋、腹筋群などの柔軟性が失われており、それらを調整する事が大変重要になります。
早い方ですとまだ施術中にも関わらず「呼吸がだいぶ楽になりました」「話そうとすると咳が出そうになっていたのですが治りました」とおっしゃられる方が頻繁におられます。
また施術後は「身体がだいぶ楽になりました」と皆様笑顔でおっしゃって頂けるので、当院では今後も「施術の基礎」を重視しつつ、今後もそれを貫くつもりです。
参考までに左側弯の方で影響が出易い部位へのリンクを貼り付けておきます。
左側弯の方が影響を受けやすく施術上、重要になる部位
頭痛コラムより
ここからは少し話が逸れますが、新型コロナウィルスとも関連性の有るお話を続けさせて頂きます。宜しければお付き合い下さい。
繰返しになりますが当院の患者さんで新型コロナウィルスに感染された方に療養中の話をお伺いすると多くの方が「咳が酷かった」とおっしゃられます。
咳をする事も腰にも負担は掛かるのですが、特に影響力が大きいとされるのがクシャミになります。
クシャミをすると体重の7倍の負荷が腰に掛かるとされ、クシャミが原因でギックリ腰を起こしてしまう人も居る程です。またギックリ腰の痛みの元になっている筋肉(大腰筋)は以外な事に横隔膜と膜組織で繋がっており、大腰筋は息を吸う動作にも関与しています。(息を吸う際にメインになって働いている筋肉は先ほどの解説でも出て来た横隔膜と肋間筋で大腰筋は補助的な立場です)
この様に呼吸に関わる筋肉は腰部周辺から上半身ですと頚部に掛けて広範囲に展開しており、激しい咳に伴う頚部(胸鎖乳突筋)の拘縮は同筋が付着する側頭骨の変位を誘発しますし隣接している蝶形骨の変位も誘発してしまいます。
側頭骨の変位は顔面神経(目、鼻、口に展開)や内耳神経(三半規管や蝸牛に影響)に悪影響を与える可能性が有りますし、隣り合う蝶形骨の上には自律神経の中枢でもあり、女性ホルモンの分泌にも大きな影響力を持つ視床下部が乗っており、更には顔面の広範囲に影響を与える三叉神経も蝶形骨の変位の影響を受けやすくなります。
また側頭骨には側頭筋と言う食品を噛む際に大変重要な働きを成す筋肉が下顎骨との間に展開しています。側頭骨が変位する事により顎関節症や顔の歪みなどの問題も引き起こされる可能性が有ります。
更には数日間に及ぶ激しい咳で頚椎(首の骨)の変位が顕著になっても脊髄の働きにも影響が出る事も有ります。
具体例を挙げますと私が整骨院勤務時代に担当していた患者さんで、かかりつけの病院にて「脊柱管狭窄症」と診断され「手術をしないと回復する事は無いです」と言われていた方が居ました。故に最初の頃は杖をつきながら途中休み休み整骨院まで通う状況でした。
私は頚椎の不整列が脊髄の働きにも影響を与える事は当時から知っていましたので、その方には頚椎の矯正をさせて頂いていたのですが、「先生に首の矯正してもらうと調子が良くなる」との事で都度継続していたのですが、最終的にその方は脊柱管狭窄症の症状が完全に無くなり、乗れなかった自転車にも再び乗れる様になり「バスに乗っても席を譲ってもらえなくなった」と笑って話せる状況にまで回復する事が出来ました。(当然手術をする必要も無くなりました)
その出来事が有って以来、頚椎のアンバランスが脊髄の働きに及ぼす影響が本当に大きいんだと実感すると共に正しい頚椎矯正で救われる人が世の中には潜在的に沢山いるのではなかろうか?と再認識する貴重な出来事となりました。
また、別件では当院を開業して間もない頃に頭痛や無気力の症状を訴え母親に連れられ訪問された10代の若者に頚椎矯正を続けた所、頭痛も治り一度は無気力が故に退学してしまった高校にも再度入学し、その後無事に卒業したと言った出来事も有りました。
バランス療法の先生の書籍にも精神的な病は大半の場合が頚椎の変位と記して有りました。最近の若者に自殺者が多い事もスマホ多用による頚椎のアンバランスから心も病んでしまい精神的にも追い込まれているのではないかと考えています。
随分と話が逸れてしまいましたが、そんな頚椎のバランスも新型コロナウィルス感染による激しい咳で頭蓋骨共々変位して中枢神経や末梢神経(自律神経は末梢神経に含まれます)に影響を与え「後遺症」と言う形でも悪影響を与えているのではないか?と思われます。
新型コロナウィルスに冒され、咳が長く続くと姿勢のバランスが崩れ、呼吸が浅くなり、自律神経も乱れ、更には神経の働き、血液やリンパ液の巡りにも悪影響が出るとご理解頂ければと思います。
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